第38回 「出張旅費の取り扱い」
業務上遠方への出張をすることが
あると思います。出張中はいろいろ
と気を使うことも多く、お客様と打
ち合わせのために食事をしたり、資
料整理のために喫茶店を利用したり
と何かとお金と気を使うものです。
最近は、そんなビジネスマンのため
のレンタルルームも流行っているよ
うです。
「先生、出張の時に日当を出しても
いいという話を聞いたんだけど、ど
ういうことなのかな」
ロータリー仲間の社長さんです。
「もちろん大丈夫ですよ。もともと
、出張の時には精算のできない経費
がいろいろかかっているので、その
代わりといってはなんですが、出張
旅費規定を作って日当を出すように
するんです」
「出張旅費規定があればいいのかね
?」
「規定はいるでしょうね。面倒くさ
いですが、それなりにメリットも大
きいと思いますよ。支払う方の会社
でも経費になりますしね」
「経費になるとはいっても、受け取
ったほうは所得税を取られるんだろ
う?大して意味はないと思うんだが
な」
「いえいえ、日当の取り扱いは税務
上は旅費交通費ですから、受け取っ
たほうに所得税はかからないんです
よ。ね、メリットあるでしょう」
「そいつはいいな。ついでに聞くけ
ど、この日当は部長や課長などの役
職に応じて格差をつけてもいいのか
?」
「当然、そういうこともあるでしょ
うね。出張にだって長期のものや短
期のもの、遠方のものなど色々ある
わけですから、実態に合わせて運用
を考えるのは当然だと思いますよ」
「よっしゃ」
社長が、ポンと拍手を打ちました。
「先生、早速うちも旅費規程を作る
よ。それで私の出張の時には日当を
一日10万円にすればいいんだ。も
ともと出張ばかりなんだから、これ
で所得税の節税ができるな」
「そういうと思いましたよ」
出張旅費規程を作成するときには
、その金額に十分注意をしていただ
かなくてはなりません。一日の出張
に対する日当が10万円などという
のは誰でもが考えることなのですが
、当然に認められません。
なぜならば、日当とは出張の時に
かかる雑費を補填しようというもの
です。いくら豪華な昼食を食べたと
しても10万円もかかるわけはあり
ません。つまり、実費部分の補填で
あるので旅費扱いであり、所得税も
非課税なのです。支払われた金額の
中に経済的な利益があれば、当然に
課税されることになります。
出張旅費規程には様々なものがあ
るようですが、ひとつの例としては
、社長クラスで宿泊を伴う場合に1
万円、日帰りで5千円というのが目
安になりそうです。
「なんだ、日当というのは以外に少
ないんだな。宿泊手当ては別にもらって
もいいんだろうな」
「それは大丈夫ですよ。宿泊がある
以上、ホテル代はかかりますからね」
「なるほど。だとしたら、ホテル代
を別に貰えば結構な額になりそうだ
な」
「ちょっと待ってくださいよ、社長
。もしかして、ホテル代は会社に払
ってもらって、自分は宿泊費を貰お
うということじゃないでしょうね」
「おっ、よく分かったな。その通り
だよ。別に貰えば大丈夫なら、宿泊
手当ても貰わないと損だものな」
「どうも社長は物事を都合よく解釈
しがちですね。宿泊手当てというの
は、宿泊代つまりホテル代に当てる
ために支給するものなんですよ。二
重に支払ったらおかしいでしょう?」
「そうなの?うーん、いまひとつ魅
力に欠けるなぁ。まあ、社員は喜ぶ
かもしれないけどな・・・」
宿泊手当てとは性格が違いますが
、転勤に伴って職場変わるときに、
支度金を支払うことがあります。こ
れも引越し代などに使ってもらうこ
とを想定しているのですが、実費精
算に代えて役所に応じて一律に支給
している会社もあるはずです。この
場合でも、社会通念上常識的な金額
であれば、旅費として取り扱って構
いません。
「ところで社長、社長はよく海外に
出張することも多いようですけど、
税務調査でよく問題にされるといっ
ていませんでしたか?]
社長が苦笑いをしています。
「そうなんだよ。いつでも、呼び出
されてアメリカで誰と会っただの、
どこへ行ったかだのうるさいんだ。
大きなお世話なんだよな」
「出張といいながら、観光ばかりし
ているからじゃないんですか?」
「人聞きの悪いことを言うなよ。ち
ゃんと仕事をしていますよ。だけど
、たしかにいつでも問題にされるし
、実際に否認されたこともあるんだ
けど、なにか問題でもあるのかな」
海外出張や海外研修は、税務調査
でも特に問題にされることが多い項
目です。実際に研修という名目の旅
行で会ったりするケースもあるから
なのでしょうが、調査の時に問題に
されるのは、きちんと説明できるだ
けの資料が残っていないことによる
ものも多いようです。
もし、プライベートな旅行費用を
会社が払っているということになる
と、その金額は役員賞与となり、会
社で損金にできないことはもちろん
ですが、個人も給与所得として課税
がされてしまい、とても税負担が重
くなってしまいます。
では、どうしておけばいいのかと
いうことですが、まずは、出張のス
ケジュール表をきちんと作成してお
くことです。いつどこへ行き、誰と
会うのかなど出張の行程が分かるよ
うにしておきます。さらに、帰国後
でかまいませんので、出張報告書を
作成しておくことです。この時に、
会った方々の名刺やいった場所の写
真などと一緒にしておくとより説得
力があるでしょう。
「出張報告書?そんなもの作れないよ」
「どうしてです?ちゃんとした仕事
なら作れないことはないはずですよ?」
「嫌な性格だねー。わかった、わか
った、これからはそうするよ。最後
に質問するけど、夫婦同伴というの
も構わないのかな?」
「遊びならもちろん駄目ですよ。そ
れ以外なら、例えば社長は英語が話
せないけど奥様が堪能なので通訳代
わりに連れて行ったとか、夫婦同伴
の国際会議に行くとか、それなりの
理由さえあれば認められますよ」
「そうかそうか、国際会議か。たま
には奥さん孝行でもしておくかな」
くれぐれも公私混同のないよう
にお気をつけください。
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